2014年、ソフトバンクが万を持して世に送り出した「AQUOS Crystal」は、お世辞抜きに世界のトレンドを3年以上先取りしたスマホなんじゃないかと思うのです。
いまファーウェイやAppleがウンウン唸りながら頑張っている「狭縁」モデルを、AQUOSは3年も早い時期に実現したのです。
そして初代「AQUOS Crystal」の次のモデル「AQUOS Crystal X」こそ、AQUOSベスト機種なのではないか、と思われます。
それまでAQUOSと言えば、何機種も開発・販売する割にはいまいちパッとしない機種でした。カメラは劣悪でデザインはずんぐりしてて微妙、スペックも普通、せいぜいIGZOディスプレイを開発したためバッテリー持ちはマシ、という程度の機種。
そのため、スマホにこだわらない人が買っていき、その購入者の多くがiPhoneに買い替えていきました。
そのなかで、AQUOS Crystal Xは輝いていたように思います。
ここが素晴らしい!
フチっこの狭さ
AQUOS Crystal Xの一番の売りはその縁の狭さ。
狭額縁スマホと呼ばれたこいつのインパクトはなかなかのものでした。
携帯ショップで実物を見て、「うああああなんじゃこりゃあああ!」となるのはこの機種くらいじゃないか!と衝撃を受けたのを覚えています。
もちろん当時、見た目にインパクトがある機種はありました。それがGalaxy Note EdgeやLG G Flexなど、変な部分を曲げたスマホ。こいつらは「うわ!なんじゃこりゃー!」ではなく、「うわぁ…何じゃこりゃ…」という印象でしたが。
当時併売していた、ドコモ版AQUOSの「ZETA」も狭額縁を謳い、非常に縁を狭く作っていることには作っていたのですが、ソフトバンク版AQUOSはさらに徹底的に縁を削っています。
さらに、まるで縁が無いように見える「クリスタル効果」という一種のプリズム加工も相まって、ぱっと見ただけでは画面下部を除いて画面しかないようなスマホに見えます。おそらくみんな驚きまっせ。
持ちやすや
そんなAQUOS Crystal Xは5.5インチの大画面。当時のiPhone6が4.7インチ、Xperia Z3などが5.2インチだということを考えるとかなりの大画面です。
画面が大きいと、やはり相対的に持ちやすさは悪化するものなのですが、AQUOS Crystalは背面が手にフィットする丸まった構造(ラウンドフォルム)であり、また縁が限界まで削られていることもあって、横幅は73ミリ。
同じ画面サイズのドコモ版AQUOSは76ミリなのですが、この僅か3ミリの差があるだけで、大画面端末ならではの持ちにくさはほとんど感じられません。
音の良さ
夏に出た「AQUOS Crystal」に続き、音を良くする2つの技術「ClariFi」「Livestage」が入っています。
ドコモ版AQUOSは正直言って良い音ではないので、AQUOS Crystal Xの勝るポイントだといえます。さすがにXperiaなどと比較すればボロが出てきますが。。。
「Poweramp」などのミュージックアプリ次第では、結構いい音も出せます。
また、音の良さは通話品質の良さにもつながっていまして、電話の受信口を作らず、ディスプレイを振動させることで音を伝える「ダイレクトウェーブレシーバー」という技術や、ソフトバンク端末同士の「HD Voice」「VoLTE」に対応していました。
スクショしやすさ
これはぜひともアプリの形式で提供してもらえないかと思うほどの便利機能。簡単にスクリーンショットがとれる機能です。
やり方は簡単。画面上部を、指でなぞるだけです。初期設定だとオフになってたのが残念ですが、慣れると付箋をめくるようにスクショが撮れるというもの。いつのまにかディスコンされてましたが、なにかアプリのような形式で配信してほしいと思ってます。
欠点もあったよ
防水・赤外線・フルセグ
まさかの国産機能を落としまくりです。赤外線とフルセグは無くてもいいのですが、防水非対応なのはさすがにまずくねえかと思うわけです。
が、当時はソフトバンクでメインで扱われている機種がiPhone、脇役がXperia・AQUOSでした。AQUOSに防水をつけてもXperiaを選んじゃう人は選んじゃうから、いっそ防水できないくらいに縁っこ削ってまえこんにゃろうという意気込みは好きです。
ROM
当時販売されていたAQUOSのドコモ版が32ギガだったのに対し、ソフトバンク版AQUOSは16ギガのストレージ。倍の差があるのはちょっと辛く、スマホ一台にゲームも写真もガンガン貯める人はちょっと辛い容量でした。
内カメラ画素数
インカメがドコモ版210万画素に対してソフトバンク版120万画素。比べるとちょっと見劣りしてしまいます。
AQUOSはもともとカメラ性能がそこまで高くなく、ピンぼけやブレが目立つ出来なので、せめてインカメラだけでもほめてあげたいところなのですが、AQUOSのカメラに褒められる点は一切見受けられません。
これはドコモ版のAQUOSであるSH01Gの体験なので一概には言えませんが、写真が簡単に撮れると言っておきながらピンぼけ、ブレが結構出ますし、うまく撮れてもそんなに綺麗じゃない。暗いところにもフラッシュなしでは太刀打ちできない。
カメラ重視の方はXperiaをどうぞ。当時のショップ店員はみんなそう言っておりました。いまやXperiaもそんなにカメラがすごいモデルではなくなってしまったので残念。
電池持ち
これはドコモ版AQUOSと比較して劣っているというだけであって、 単体で見ると決して悪いわけではないのですが、ドコモ版AQUOSが3300mAhの電池容量を誇るのに対して、ソフトバンクのほうは2610mAh。数字で比べてしまうと、 やはり劣ってみえます。
これは持ちやすさの代償なので仕方がないといえば仕方がないのですが、 電池長持ちというのはAQUOSシリーズの唯一と言っていいほどの持ち味ですから、できれば妥協せずにやってほしかったところです。
まとめ。
フチ良し、見た目よし、音良し、機能良し。しかしところどころ、フラッグシップに遅れを見せる、AQUOS Crystal Xはそういった印象です。
ソフトバンク全体に言えるのですが、どうも「全部乗せ」を謳うような国産メーカーのスマホではなく、 機能を最低限に絞って、セールスポイントを一箇所に集約する、とでも言いたげな機種が多く、わりとこの機種も人によって好みが分かれるのではないかと思います。
それでも、全力でiPhone売りたいマンだったソフトバンクに、限界まで頑張って開発したAQUOSがやるとこまでやったんだろうなあ、という業界の背景まで見ると、ドコモに惰性で提供していた端末たちよりも魅力的に見えるのがAQUOS Crystal Xだったのです。