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世界一クソなスマホを考えてみた。伝説のクソスマホ・GAFA編

今や世界のイノベーションランキングや時価総額ランキングを総なめする存在となったGAFA。産業構造の変化を表す存在として一目置かれ、ここで働くひとは全員超一流エリートで、全員英検一級で、シリコンバレーか麻布に住んで、延期のことをペンディングって言っちゃうタイプの人達です(偏見)

そんな超一流の人たちでも、うっかりミスはつきもの。今回は各GAFA陣営が生み出した迷スマホをいくつか紹介します。とはいえGAFAはメーカーではない上、ソフトウェア関連の「迷」要素が多くなるため、従来の迷スマホとはちょっぴり嗜好が異なることをご承知おきください。

Amazon:Fire Phone「誰得スマホ」

Kindle FireでおなじみのAmazon。タブレットでは一定のシェアを獲得していますが、スマホでもAmazonブランドの進出を図ったことがあります。

それが「Fire Phone」。発売は2014年で、性能は当時のフラッグシップと同等程度に作られました。
SoCはQualcomm Snapdragon 800。CPUは2.26 GHz クアッドコア。メインメモリ2GB、ストレージ 32または64GB。電池2400 mAh。4.7 in (120 mm)IPS LCD、1280×720ピクセルのディスプレイ。
背面カメラ、1300万画素。前面カメラ、210万画素。

ウィキペディアからざっとコピペするとこんな感じ。だいたい同世代期のXperiaZ3 compactあたりと同等の性能ということになります。

性能は十分だったのですが、問題は内容。ハードの特徴はダイナミックパースペクティブと呼ばれる、疑似3D機能です。顔をフロントに搭載された5つのカメラが認識して、3DのCGをまるで立体映像の用に表現できます。

この仕組みはCEOのジェフ・ベゾスさん肝いりのものでしたが、大きな問題を抱えていました。

用途がないんです。

ロック画面で立体映像。まあこれはギミック的に楽しめます。

でも、それしか用途がなかった。

やりようによっては、Amazonに商品を出品する際に画像データを工夫することで、購入前にFire Phoneで商品の3Dモデルを確認してから買う…ということもやろうと思えばできたのでしょうが、そんなソフトウェア面の工夫を一切せずにハードだけ作っちゃったんです。往年のセガ状態。

一応、FireflyというSiriぽい、しかもカメラで読み取るとすかさずAmazonの関連情報にアクセスできる機能も搭載(例えば音楽とか映画のワンシーンとか店頭の商品とか)。世の中のすべてのアイテムをAmazonと紐付ける野心的な試みでしたが、あくまでソフトウェアなのでFire Phoneじゃなくてもいいじゃーんとなり、派手にずっこけ。

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しかも、OSをAndroidベースで開発したにも関わらず、Google Playには非対応。Amazonのアプリストアから限られた量のアプリをインストールするのが関の山で、Googleアプリに慣れ親しんだAndroidユーザーを引っ張ってくることはできませんでした。

649ドル(だいたい7万円)の高価格スマホにだれも手をつけず、通信とセットで99㌣販売を行うも、結局ヒットせず。AmazonはFire Phoneによって200億円の大赤字を出したのでした。

Facebook:Facebook Phone「囲い込もうとしたけど誰も使わなかったフォン」

フェイスブックの失敗スマホは通称「フェイスブックフォン」と呼ばれます。しかしこれはあくまでハードとソフトをくっつけた呼び名であり、ハードはHTC Firstというローエンドのスマホ、ソフトは「フェイスブックホーム」と呼ばれるランチャーアプリでした。そしてこの「フェイスブックホーム」が搭載されたスマホを「フェイスブックフォン」と呼びます。

2013年に発売。ロック画面からホーム画面にいたるまであらゆる場所でフェイスブックのつながりが生まれるUIとなっており、写真をとればそのままフェイスブックにアップすることはもちろん、ホーム画面でタイムラインが表示され、簡単にいいねを押すことができたり、メッセンジャーのやり取りをスムーズに行えるなどの工夫は随所に見受けられました。

ただ問題は、消費者が誰も「フェイスブック中心のスマホ」に興味を示さなかったこと。

しょっちゅう通知は送ってくるし、アプリひらけば表示されるやんけ、といったところでしょう。

例えば皆さんも「LINE Phone」があって、ホーム画面からだれかにメッセージやスタンプが送れるUIになっていても、よほどLINEのヘビーユーザーでない限りは買おうと思わないのではないでしょうか。

あるいはホーム画面でいつでもポケモンをゲットできる「ポケモンGoPhone」とか…
うーん、要らない。

フェイスブック自体を否定するわけではありませんが、フェイスブックがズケズケ出てくる仕様は煙たがられたのでしょう。イメージとしては、駅前にマックがあるのは嬉しいけど、駅のホームや自宅の中にまでマックがあるのは邪魔だし無駄だし、といったシチュエーションに近いんでしょうか。

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スマホのスペックは抑えめで価格は1万円程度。しかし結局買われることはなく、Fire Phone同様に99㌣販売の道をたどりました。Amazonよりはこだわってなさそうなので、出血はこちらのほうが少なかったのかな…

少なくとも、フェイスブックフォン、で出てくる情報はどえらい少なかったので、日本国内では失敗どころかそもそも認知すらされていなかったのではないか疑惑があります。

Google:Project ARA「Googleご自慢のやるやる詐欺」 

まずはじめにこちらの動画を。

Googleが3年ほどかけて構想していた、モジュール型のスマホ。その名も「プロジェクト アラ」です。本体の処理パーツのほか、スピーカーやカメラ、センサーなどがモジュール化され、レゴブロックのように必要な部品をカチャカチャくっつけることで個人の好みのスマホを作れるという触れ込みでした。

完全に個人の意見ですが、こういう考え自体はありだと思いますし(何様)、各スマホメーカーの企画会議の中で一度はアイデアが出そうな(主観)、そんなスマホです。

しかしこのスマホはプロトタイプが作られるところまで計画を進めながら、コンシューマーの手に渡ることはありませんでした。2013年にモトローラによって構想が発表され、モトローラがグーグルとの資本関係を強めるとプロジェクトはGoogleに移管。当初はCPUなどパーツレベルでの交換を目指しましたが、2016年に発表された上記動画では、あくまで生活にあわせて使える機能をチョイスするものに。

しかし同年秋、この計画はストップすることになりました。

ウェブメディアのWIREDから。

Project Araは、グーグル・ファイバーよりもはるかに試験的で、あまり利益が見込めないものだったのだろう。「Araでのアプローチは、われわれがスマートフォンについて知っているすべての特徴に逆らったものだ」と、テクノロジーマーケットアナリスト兼コンサルタントのジャン・ドーソンは語る。「スマートフォン事業の大きな問題は、成功して利益を得るにはある程度の販売台数を必要とすること。アップルとサムスンだけが大きな利益を得ていて、それ以外は販売台数に苦戦している」。そして、グーグルに残ったAraは息絶えたのだ。

https://wired.jp/2016/09/13/death-of-project-ara/

つまり、プロジェクトアラでは収益性が見込めなかった、というのが、このプロジェクトが停滞してしまった最も大きな要因と考えられます。パーツごとのスマホは他になく、例えばGalaxyをすでに持っている人にアラのパーツを買ってもらうことは不可能です。

まずコアとなるアラへの機種変、そしてアラユーザーが「アラこれ便利ね!」と言った具合にパーツを買い足していって、ようやくエコシステムが登場します。追従するメーカーが登場すればなおヨシでしょう。

こうした効果というか、可能性が限りなく低いということ。それが、このプロジェクトが御破算になってしまった要因のようです。

Apple:iPhone5「蓋をあければパチンコガンダム」

ジョブス亡き後、彼が遺したアイデア…例えばLightningケーブルやSiriといった仕組みを活かすべく、モデルチェンジの施された機種がiPhone5です。ケーブルの変更やLTEの対応など数多くの変更を加え、鳴り物入りで登場したこのスマホですが、現在にも伝わる様々な迷要素が含まれていました。

最も問題視されていたのは、iOS6のバグが大量に残った状態で一斉にアップデートが配信されたことです。「アプリが消える」「ネットの接続が遅くなる」「同期エラー」などの報告が相次ぐ中、最大の目玉となったのが「パチンコガンダム駅」に代表される、新しいiPhoneマップのエラーです。

起きたことは
・マップ上の名称がとんちんかん
・マップ上に表示される建物の形がおかしい
・地形データもおかしい
といったこと。

特に地形データに関しては
・羽田空港が大王製紙の工場に
・中央線の駅がパチンコガンダム駅
・皇居が高校に
・中部空港がハングルの謎表記に
…などなど、キリがありません。

アプリの仕組み自体はとても良くできていたのですが、レイヤーとしてのっけるデータがあまりにお粗末でした。まずApple本社のある米国と日本とでは測量法が少々違ったこと、また日本のデータが不完全であったり、古かったりしたこと。

そのため、パチンコガンダムを例に出すと
・昔、駅のとなりにパチンコガンダムという店舗があった
・iOS地図にデータをプロットする際に測量がずれ、駅にパチンコ屋が出現

というロジックのようです。時空と空間、それぞれに大きなズレがあったというわけですな。SFみたい。

AppleがGoogleマップを離れ、独自にマップの仕組みを構築しようとしていた初っ端の出来事だったので、これは大きな問題となりました。当時のiOS担当者は首になったようです。米国流雇用。

「ソフトウェアのバグじゃん!迷スマホじゃないじゃん!」
と思われるかもですが、実はiPhone5の不具合はこれだけではありません。

過去にも書きましたが、auの通信規格とiPhone5の相性が悪く、非常に電波のつながりが悪い機種としてauで名を馳せてしまうことになったのです。

詳しくはこちらの記事にて。。。

おわりに

ここまで何回かにわたり「迷スマホ」をとりあげてきました。
もちろん個人の趣味や娯楽という面で、変なスマホをこき下ろすという内容ではありますが、
どちらかというと私は開発者のみなさんに感謝を申し上げたいと、そう思っています。

なぜなら、これほど大きな投資をして、ハデにずっこけたからこそのワクワク感があり、不安や期待が交錯するドラマのような展開をスマホ業界で起こしてくれたからです。

2020年現在、どのメーカーも安定路線に入り、昔のような熱いシェアバトルや意欲的な挑戦作も少なくなりました。「Galaxy Fold」くらいでしょうか、ここ最近だと。

しかし、こうした現状は、数々の迷スマホが爆死した骸の上に成り立っているといっても過言ではありません。各企業の挑戦、その行動に、最大限の敬意を払いつつ、これからも迷スマホをm9(^Д^)プギャーしていく所存です。

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デジタビ
ブログ歴10年の副業ライター/「デジ旅!」管理人/Kindle「怒涛!フィリピン滞在記」販売中/建築/ガジェット/鉄道/名古屋出身。 ライター案件の依頼、基本何でも引き受けます。isutabiz@gmail.comまでお気軽にご連絡下さい。

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