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「昭和100年」の世界。中銀カプセルタワーに潜入!

地デジはねえ、キッチンねえ、ガスもねえ、お湯もねえ、断熱材ねえ、家賃は毎月6万半。でもおらこんなビル嫌だ、とならない。「中銀カプセルタワービル」訪問レポ。

さて、6月9日、東京銀座にある中銀カプセルタワーに行って参りました。

もう是非皆さんにも行っていただきたいと思いましたので、記事にします。

私はまず銀座線で新橋に向かい、「新橋ってめっちゃ大きいビルがあるんだなあ」(田舎者の感想)と思いながら、中銀カプセルタワーを目指しました。


中銀カプセルタワーの外見


歩道橋を登ると見えてくる、中銀カプセルタワーは異様な見た目です。ねずみ色とも銀色とも言えない色の、ゴツゴツしたブドウのような建物が見えてきました。

1階にはコンビニが入っていて、見上げないと全然変わったビルみたいな雰囲気はしないのですが、見上げると非常にユニークな窓が連なり、四角い箱が連なっています。

今回はツアーでの参加でした。参加者は自分を含めて7人ほど。物腰の柔らかいおじさんがたくさん説明をしてくださいました。興味深いなあ、と思う反面、聞けば聞くほど早く登りたくなり、うずうずしてきます。

この中銀カプセルタワーは、建築家の故・黒川紀章が大阪万博の展示にインスピレーションを受けて建築した建物です。

13階建てで、なんと140ほどのカプセルが繋がっているそうです。

創られたのがおよそ40数年前になるので、非常に劣化が進んでいるんだとガイドの人は話しておりました


中銀カプセルタワーの中に潜入


全員でまず12階のブリッジに上がります 。中銀カプセルタワーのエントランスは、住民の方もいるので撮影禁止でした。ドアこそ変わったデザインですが、中はごくごく普通の古い建物といった印象でした。

が、エレベーターの入り口に、うっすらと棟をしめす「A」「B」の文字が書かれていたり、壁の材木は建築当初のまま残されていたり、非常に歴史ある建物であることを感じさせました。

エレベーターは5人ほど乗り込むと狭苦しさを感じる、小さなものです。経年劣化からなのか、換気扇の音と動作の音が非常にうるさいエレベーターに乗って12階へ上がります。

上がるとそこはAとBとを結ぶブリッジになっており、誰かが設置した灰皿と椅子だけが寂しく置かれていました。ブリッジは白い鉄板でできているのですがこれがかなり錆びており、昨晩の雨を受けて水たまりができていました。

「抜けねえよな、これ?」

そう思ってブリッジの下を覗き込むと、AとBとの間の隙間がまるで雪山のクレパスのようになっており、足がすくみます。


中銀カプセルタワーの構造


この中銀カプセルタワーの特徴として、部屋が「カプセル」と呼ばれるコンテナのようなものでできているのが特徴です。

ペラペラの鉄板で真四角に作られたこのカプセルの部屋は、エレベータのある柱にくっつけるような形で部屋それぞれがスパイラル状に引っ掛けられており、ボルトを外せば取り外しができる仕組みです。黒川紀章は25年に1回のペースでコンテナを交換することで、このビル自体を200年間残していこうという思想でした。

しかし建物が竣工してから46年間、一度もカプセルが交換されたことはないそうです。水道管、温水管、下水管はすべて外付けになっており、キッチンはないのでガスはありません。


カプセルの中へ


ブリッジのある12階から7階に降り、リノベーションがなされたカプセルの中を案内していただきました。

部屋のサイズはかなりコンパクトで、ヨコ2.5メートル。奥行きは感覚ですが4メートル弱といったところです。居住空間自体は4.5畳ほどだった気がします。部屋の中はリビングとユニットバスで構成。カプセルの中で最も印象深いのは、大きさ1.5 M ほどの巨大な丸窓です。

この丸い窓がなければ、中銀カプセルタワービルはわりと個性の少ないビルだったかもしれません。そう思うくらい、この丸窓の存在はでかいです。この窓ははめ込み式で、開けることはできないので空気の通りは悪い気がします。

またカプセルの中はコアと呼ばれる柱に引っかかる形で付けられているので、心なしかカプセルに入った瞬間 カプセルの中は揺れたような気がしました。

ユニットバス入り口も丸くくり抜かれており、このカプセルが「丸」のデザインに拘っていることが感じ取れます。


リノベーション前のカプセルへ。


一度カプセルを出て、11階へ上がります。

次に案内してもらったのは、46年前のカプセルを なるべく保存している、という部屋でございました。そこにはソニー製のブラウン管テレビが置かれており、

さらに名前が出てこないのですが カセットが発明される前の音響機器が置かれていました。

わかるおじさんがいたら教えてください。

ちなみにラジオもあり、聞き取れないのですが音も出ます。また収納に関しては舟のヨットを参考に作られているそうで、非常にコンパクトで効率的な収納が壁一面に沿って作られておりました。

まるでそこは手塚治虫の描く未来のような空間です。真四角で一切飾りのないカプセルの中に、テクノポリス・トキオと言わんばかりの機械が埋められ、その他余計なものは一切置かれていない印象でした。

空間そのものは洗練され非常に未来的なのですが、置かれている家具家電は例えばテレビはブラウン管でチャンネルを回すタイプだったり電話機がダイヤルを回すタイプであったり、と、どこか懐かしさがあり、また46年前のエアコンが壊れ、最新のエアコンに着けかえられているなど、新旧が混在しており非常に不思議な空間でした。

ちなみに正面には、かの電通やパナソニックなど、超巨大企業の本社が建てられております。竣工当時はまだそういったオフィスがなかったので、丸い窓から東京タワーと富士山が望めたそうです。そう思うとパナソニックも電通も空気が読めないなあと思えてしまうのですが、まあこれは時代の流れなのでしょう。


中銀カプセルタワーはなぜ劣化しているか


さてこの中銀カプセルタワーですが、今非常に揉めているのをご存知でしょうか。

簡単に言ってしまえば、 壊すか 残すかです。

ビルのオーナー中銀は壊して建て替えたいと考えているそう。しかし経済的にみればそうかもしれませんが、

歴史的価値を考えると、どうもこのビルは残していくかリノベーションしていく方が、結果的に後世への利益は大きくなるのではないかと思います。

実際外国からの見学者も多く、テレビ CM や映画のロケ地になったり、英語のツアーに参加する外国人も多くいるそうです。そしてエアービーアンドビーでは大人気の物件の一つだったようです。(いまは民泊禁止になった模様)

それでも建て替えたい理由の一つとして、中銀カプセルタワーが非常に劣化していることが挙げられます。そもそもこのカプセルは25年に1度交換することを前提として建てられました。そのため、室内は超簡素で、排水管もカプセルの外に作られています。

しかしカプセルが交換されなかったため水道系のパイプが劣化しており、例えば水道管が破裂してしまっても、カプセルを取り替えない限り修理ができない仕様になっています。

さらにカプセルの隙間に雨水が溜まることによって、鉄板が腐食しカプセルに雨漏りがよく起きているんだそうです。

耐震強度的には、東日本大震災の際の揺れもあまり感じない程度には頑丈だったらしいのですが、どうも居住空間としていかがなものか、と思えるようなエピソードがいくつかあります。

そこで今進んでいるのが、2023年にタワーのカプセルを交換し、リノベーションする計画。これによって 中銀カプセルタワービルを次の50年に向け残していこうという動きがあります。

ツアーガイドさんが非常に熱心にそのことについてお話しされておりましたので、この歴史的建造物をいつまでも東京の景色にできるように みんなで支えあっていけるといいなと僕も強く思っております。


住もうと思えば住める


なお、ここのタワーはカプセルごとにオーナーがいて、賃貸として暮らすことも可能ですし、オーナーとなってリノベーションをすることも可能です。賃貸する場合は新宿や銀座にほど近いこの土地で破格とも言える65000円

しかもカプセル同士が少し離れている(左右だけでなく、上下も)ので、防音効果はすごく高いそうです。おそらくカラオケをしても近所迷惑にはならないのではないでしょう。

その代わりお湯は出ませんし、キッチンもありませんし、エアコン設置工事にはかなり高額な費用がかかります(地表まで室外機のコードを伸ばさないといけないらしい)

なんでも元々のコンセプトは、いまでいう社畜がこのカプセルで残業し、ちょっと寝てまた出勤するという、平日の書斎のような利用シーンを想定したものだったようです。

なので、普段の住処には向かないのかも。


それでも中銀カプセルタワービルが好きな理由。


ツアーを終えて、この建物を一言で表すのであれば、「昭和100年のビルディング」と言えます。

直截的な無駄のないデザインは非常に面白く、カプセルという形にすることで多くの人を住まわせることができます。

そろそろ建てられて半世紀。こういった建物が、メインの住居ではない、ある種の「サードプレイス」として活用される。そんな時代を期待してしまいます。

そうすることで、特に都心部の満員電車だったり、荒天時の帰宅難民をへらす効果が見込めるのではないかと。

なによりも正面は電通です。電通は残業で稼いでナンボです。絶対需要のある立地。

穴倉のような場所とはいえ、社会問題の解決に非常に有用なのではないでしょうか。

建て替えられるにせよリノベーションされるにせよ、是非一度今の、中銀カプセルタワーを目に焼き付けていかれることをおすすめします。

なお、ツアーに関しては Facebook のページなどからメールで予約ができます。https://www.facebook.com/NakaginCapsuleTower/

ABOUT ME
デジタビ
ブログ歴10年の副業ライター/「デジ旅!」管理人/Kindle「怒涛!フィリピン滞在記」販売中/建築/ガジェット/鉄道/名古屋出身。 ライター案件の依頼、基本何でも引き受けます。isutabiz@gmail.comまでお気軽にご連絡下さい。

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