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【島旅】”沖永良部島”(おきのえらぶじま)滞在記2017~1日目~

☆8月22日


トップガンのエンドロールが流れ出したところで、大イビキの男が起きた。

iPadの時計は5時10分を指している。

モノレール始発が6時だから、いくらイビキが止んだと言って今から寝ていてはいけない。

始発のモノレールで旭橋駅へ行き、乗船手続きをしないと船に間に合わないのである。

沖永良部島滞在記~序章~(那覇空港まで)
沖永良部島滞在記~1日目~(那覇空港~民宿)
沖永良部島滞在記~2日目・午前~(ジョッキヌホー~田皆岬)
沖永良部島滞在記~2日目・午後~(DKあし~西郷南洲顕彰館)
沖永良部島3日目(神の営業マン現る~2000円札への殺意)

とりあえずトイレをすませてモノレールのホームへ向かう。

だいたい5時25分といったところだろうか。

しかし、目指す道中は天気予報を裏切って大嵐である上に、

モノレール駅はまだ空いていなかった。

しかたないので空港ロビーへ戻り、喫煙室で時間を潰す。

初めてタバコを持って来てよかったと思う。

自分はゆっくりとタバコを消費していくので、15分20分がタバコ一本であっという間に潰せる。


そしてモノレール駅に戻ると、

ちょうど駅のシャッターが上がるタイミングだった。

ホームに上がれたのがちょうど5時50分あたり、上がったタイミングでモノレールがホームに滑り込んで来た。

深夜便で沖縄に向かう人は、モノレールの始発時間ギリギリまでホームに向かわなくてもいいということだろう。

モノレールの一番前に座り、沖縄の、美しい雨上がりの朝を見つめる。

景色もどこか南国であるように感じる。

車内放送の音楽や運転手の服装もどこか南国テイストである。

つまり、ここは南国なのだ。実感が湧いてくる。

空港を出て4つ目あたりだろうか、旭橋駅を降りる。

そして早歩きで港に向かう。

沖縄であるという実感が、ワクワクを加速させてくる。

港に到着してすぐ、乗船手続きをするが、これが大混雑。

雨が降ってなければ5時に空港を出て歩いて向かったほうがいいかもしれない。

結局、乗船受付時刻のギリギリに船に乗り込んだ。


☆船旅!!!しかし


ここで、不穏な空気がながれる。

おさらいしておくが、ここまで私は「与論島」を目指していた。

しかしこの船の出るタイミングで、与論の港がかなり荒れていることがわかっており、運が悪いと「抜港(通過)」になるかも知れないというのである。

ひとまず、船旅を楽しもうぜの精神でニコニコ出発。朝7時だ。

私の買った二等船室は、自由席で、どこで寝転んでもいい。

座席は仏教の教えである「起きて半畳寝て一畳」を遵守するように、「寝て一畳」のサイズだ。

枕元だけ仕切りがあって、隣同士の寝顔は見えないようになっている。

美ら海水族館などに近い、本部(もとべ)の港に着いたのが9時過ぎごろ。

ここで、与論を目指していた半数が、ビビって…もとい大事をとって、船を降りていった。

そのイレギュラーのせいか、船の出発は1時間ほど遅れた。

もしビジネスだったら迷惑千万だろうが、今回私は無計画旅である。買ったサンドイッチを頬張りながら、空港で眠れなかったぶんを取り戻すように爆睡した。


事件発生は11時あたりだった。

与論の茶花港が大荒れで、接岸不可能、抜港となった。ででーん♪

頭のなかに、ガキ使のあのサウンドエフェクトが流れる。

本部港で脱出のチャンスを活かせなかったボンクラは、これでみんな仲良く沖永良部島行きである。

ここで私は考えた。沖永良部島でもいいのでは、と。

抜港になると、一個先の港まで行き、翌日の便で引き返すときに船が無料になる。

しかし、その翌日の便で与論を抜港されない可能性がないとは言い切れない。

じゃあ、沖永良部島に2泊して、沖永良部を堪能して、そこで船に乗って那覇に帰ればいい話ではないか。

というわけで、即座にGoogleを立ち上げて沖永良部島をググる、しかし船の上なので電波が悪いし船が揺れて気持ち悪いしで、まともに情報収集ができなかった。

そして、「伊延(イノベ)港」という、ベンチャー企業の社長が好みそうな名前の港で降ろされた私に待っていたのは、

緑豊かな自然がひろがる沖永良部島だったのである。


☆沖永良部島の初日。


さて、港に降りたはいいが、迎えがない。

本来、沖永良部島では「和泊(わとまり)港」という港に着くはずだが、波の影響で接岸する港が変わってしまった。

伊延は和泊と、まったくの真逆に位置する。

島の反対まで徒歩1時間ほど、流石の私でも奄美諸島の真夏の真昼というクソ暑い中を歩く元気はない。

港でうろたえていると、なんだか「自分と境遇が似てるっぽい」人を見かけたので話しかけてみる。

聞くと自分と同じ、与論を目指したけど抜港されてしまった貴重な同志である。

タクシーを呼んだらしいので相乗りさせてもらうことになった。

おかげで、たった500円で、和泊まで来られたのだ。

まず、レンタサイクルの店に向かう。道中で帰りの船の予約変更を済ませて、てくてく歩く。


たどり着いたレンタサイクル屋で原付を貸してもらう。

普段は原付なんて乗らない!と、店を切り盛りしていたおばちゃんに話すと、5分ほど原付教習をしてくれた(嫌々ながら)。

バイクの起動方法、発進方法、止まる方法、方向指示器を出す方法、椅子のフタを開ける方法、給油の方法…ありがたい話だ。

さらに、音符柄の可愛いヘルメットをタダで貸してくれた。

そしていざ、バイク発進。

初めは慣れないが、前に進むだけならイージーである。

しばらく走ると左側に、一面のサトウキビ畑と波の荒れ狂う太平洋が見えてくる。

まさしく、「ざわわ ざわわ ざわわ 広いサトウキビ畑は ざわわ ざわわ ざわわ 風が通り抜けるだけ」の世界観だ。

たまらなく美しいので、原付歴5分であるにもかかわらずオフロードに飛び込み、ひたすら駆けた。

浜に降りる獣道があればバイクを停めて降りた。プライベートビーチである。

三方を侵食された奇岩の連なる崖に囲まれ、正面には「東映」のロゴが似合いそうな荒れ模様の太平洋が広がる。

しかし遠浅だからだろうか、足元にはさざなみ程度の波が来るばかりである。すっかりインディジョーンズのような気分になる。

しかし、原付の制限速度30キロというのは歯がゆい。

45キロくらいが適切なのではないだろうか。

だって、この島の人々はあたりまえのように40キロ超えで原付を走らせるんだから…


☆喫茶リーフ


和泊の集落は、さすが船の寄港地だけあって、

ビジネスホテルやドラッグストア、規模は小さいものの携帯ショップや家電量販店がある。

しかし街を抜け出すとひたすら「ざわわ」な感じである。

船を降りて2時間ほど。

いい加減トイレに行きたいが、この島には全国チェーンのコンビニはない。

しかし一般家庭などにお邪魔してトイレを借りるほど、私は厚顔無恥ではない。

プライベートビーチですればいいのだがその勇気もないし、

綺麗な海をそんな形で黄色く汚染するというのは、

島に上陸して2時間の私には失礼極まりない行為ではないか。


こんなことなら、さっき通過したマツモトキヨシにでも立ち寄るべきだったかもしれない…ということを考えていると、目の前にコテージ風の建物が現れた。

木製の看板にはかわいく「喫茶 リーフ」と書かれている。

バイクを駐車場に停めて近寄ってみる。

立地は、「崖の上のポニョ」のあれと程よくかぶるイメージだ。

崖の上にポツンと建っている。だから景色が、ものすごく良い。

店の中に入ってみるとおばちゃんがテレビを見ている。

てっきりお客さんが寛いでいるんだなと思うと、「あらいらっしゃい!!」と慌てて席を立つので、そこで初めてこのおばちゃんが店員であることを知った。

時計は15時をとっくに過ぎているあたりを指していたが、

船でサンドイッチを食べて以来何も食べていなかったので、

シーフードピラフを頼んだ。

木のぬくもりが溢れるロッジ風の建物から外をみると、波が砂浜に押し寄せている。

空は多種多様な形をした雲をたたえて、太陽は燦々と輝いている。

そして店の庭先ではハイビスカスだろうか、南国の花が咲く。

そのカラーリングがすばらしく、とても美しい景色だ。

そうこうしているとおばちゃんがシーフードピラフとわかめスープを持って来てくれた。

これで確か、860円である。東京なら1200円ほどしても不思議ではないだろう。

エビやアサリのたっぷり乗ったピラフには、島の名物であるキクラゲが結構な量、盛り付けられている。

口に運ぶとカリカリして美味しい。

きのこ嫌いの私が、キクラゲを美味しいと感じるのは、人生初だ。


ご飯を食べていると、お店のおばちゃんと、二階から降りて来たご主人と、おそらくご近所さんで談笑が始まった。

はじめはなんともおもわずピラフをかきこんでいたが、ピラフを完食してトイレを借りて、さあ出発というタイミングで通り雨が降り始めたので、足止めを食らった。

店にいたご近所さんが、「島の先生の方?」と聞いてくる。

まったく見当違いも甚だしい!(嬉)(嬉)(嬉)

正直に、名古屋から来た学生だということを伝えると、観光名所の洞窟と、店から見える浜にウミガメが来ることを教えてくれた。

ひょっとしてここに来るまでに立ち寄ったプライベートビーチにも、ウミガメが上がって来ていたのかもしれない。


雨が上がったので、荷物をまとめて出発する。

別れ際に、例の近所の人から「移住しない?仕事は紹介するよ」と話を持ちかけられてびっくりした。

来年から就職する東京に嫌気がさしたら来るよ、と伝えた。

不本意ながら、魅力的な逃げ道を見つけてしまったことになる。

さらに原付で進む。

途中、ウジジ浜、という場所に立ち寄る。奇岩が面白いビーチだ。

しかしゴツゴツしていて泳ぎには不向きだろうし、おそらく何千キロと漂流したであろう簡体字やハングルの書かれたゴミがウヨウヨしていたので、岩の写真だけ撮ってさっさとおさらばした。


そして夕方の4時半くらいだろうか、知名の集落にたどり着く。

まっすぐに、泊まる予定の宿に向かう。

しかしまだ、泊まる予定の宿の掃除が終わっていないということだ。

宿の方が1階のカフェに案内してくれて、アイスコーヒーでもてなしてくれた。

なんでも、一家でこの宿を切り盛りしているのだという。

同じ土地に家と、居酒屋と、カフェと、カラオケ屋と、5部屋のビジネスホテル。

ここの家庭は生活力あるなあ。

部屋の掃除が終わったということで部屋に向かうと、

4畳ほどの部屋にビジネスホテルの最低限というべき装備の整った、オーシャンビューの部屋が迎えてくれたので驚いた。

なんと、これで素泊まり2500円である。

なにより、東京のカプセルより安いのにお風呂もあって冷蔵庫も冷房もちゃんと機能している。

1ヶ月滞在しても電気水道代込みで75000円ではないか。暮らせそうな勢いである。

惜しむらくはアメニティで、ボロボロのボトルに

「ボデリープ」

「ツャンプー」

と書かれた「ボディソープ」「シャンプー」がトイレのタンク上にボンと置かれているのみだった。


ひとまずここに落ち着いて、荷ほどきしてまた原付に飛び乗った。

そして近くのヤコモビーチに向かった。

ヤコモビーチは毎年4月に海開きされるビーチのひとつである。

波打ち際に民宿一件、ちょっと浜辺を挟んで緑化された公園と、沖縄式の墓地が広がっている。

誰もいなかったので写真撮影と、持って来たiPadでスケッチの時間だ。

私は7月にiPadとペンシルを買ってからすっかりスケッチが好きになってしまった。

この時も、奇岩に腰を下ろして1時間半ほど、ひたすらお絵かきに夢中になっていた。

気がつけばすっかり日は傾き、

さっきまで歩いていたところは潮が満ちて海になっている。

あと15分気づくのが遅かったら帰れなかったかもしれない。

街灯もなく人気のない墓地近くの海岸で遭難なんて、ご勘弁願いたいものだ。


さて、先述の通りこの島には大手コンビニというものは一つも存在しない。

24時間営業するメリットがないのだろう。

だがその代わりに「Tマート」というものが存在する。

見た目が完全にちょっと昔のローソンだったので立ち寄ってみたが、食べ物系はかなり少なかった。

コンビニエンスストアというよりグローサリーストアである。

しかたないのでチョコクッキーと4個入りで270円の高コスパなソーセージ入りパンを買って宿に戻る。


さて、ここで私には懸念があった。

金がないのである。

財布には、13000円入っている。十分な金額に思える。

しかし、このうち5000円は宿に消え、2800円は帰りの船賃である。

さらに、バイクを返却するときのガソリン代にもなる。

だから正味、3000円くらいで生きねばならない。

しかもその3000円のうち1100円は、きっと明日見学に行く洞窟の入場料に消えるだろう。

そうなると、食費やお土産代を含むフリーのお金は1900円だ。

しかも、思った以上にこの島はクレジットカードが使えない。

普段はマナカ(名古屋版スイカ)とおサイフケータイで生活しているせいか、この旅では財布の中身が減るスピードにただただドン引きするばかりだ。

さらに、祖母から内定祝いに貰った虎の子の10万円を崩そうにも、そのお金を入れている十六銀行に対応したATMなど存在しない。

あるのは「あましん」(たぶん奄美信用金庫)だけだ。

これではいくらマナカに4000円チャージされていても意味がない。

ちくしょう、日焼け止めを買うのは無駄な出費だったかもしれない。

思えば昨日、お気に入りの店で服も買ってしまった。せめてクレジットカード決済すべきだった。

バイト先の先輩に1万円を貸したまんまだが、ごねてでも取り返すべきだったかもしれない。

友達の分を肩代わりしている旅費を、早目に貰っておくべきだったかもしれない。


結局この夜は、ソーセージ入りパンだけで命をつなぐことになった。

身長180センチ、体重61キロ。BMI指数がマジで終わっているので食わなければいけないのだが、

金がないというのはひもじいものである。

明日は洞窟に1100円、食費は朝の喫茶店を5、600円で済まし、昼食は売店でなんとかし、夜は2000円くらいで、一杯くらいお酒を飲んで過ごしたいもんだ。

この時点で、3日目の朝ごはんはとうに諦めている。

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山内淳史 Atsushi Yamauchi

1995年愛知県生まれ。大学時代に先輩に騙されて入った携帯屋のアルバイトでスマートフォンの魅力を知る。 機種の外観だけでスマホのメーカーと型番がわかるようになった頃、旅行にハマり、アルバイトの収入の大半を旅行につぎ込むようになる。おかげで日本中の人と地元トークができるようになり、その謎知識から現在の職場では営業先の地方にいるお客様を不必要にビビらせている。 ブログ歴は8年。現在のブログは3代目。 「手のかかるロビンソンだなぁ」(isuta1205.com)のほかに寄稿多数。 「KOKACARE」(http://healthcare.halfmoon.jp/blog/) 「EDIT知多半島」(http://chitahantou.net/)など。

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